プログラマーとしてではなく、あくまでもシステムトレーダーとして、これまでの研究の成果などをこれから何回かに分けて記事にしていきます。
その中で随時紹介するEAはいずれも、当方がオリジナルで作成したものですが、「移動平均線」や「RSI」や「ブレイクアウト」など、昔から広く知られている手法によるものばかりで、いわゆる「聖杯」や「門外不出の秘法」などといったものは1つもありません。
「そんなもので勝てるのか」と思われるかも知れませんが、それは、最終回まで読んでいただいてから、読者各位のご判断に委ねたいと思います。
本日はその第一回目として、終値と移動平均線とのクロスサインを使った順張りのEA1号を紹介します。
上の画像の黄色丸で囲った足で判断して、次の始値でロングです。もちろん、そのままでは勝てないのでトレンドを把握するフィルターを入れてあります。
上の画像は、過去5年間の価格データを用いてテスト運用(=バックテスト)をした場合の口座残高の推移を示す資産曲線です。
長期間にわたって利益が出ていない部分がありますが、どうにか黒字で終わっています。
EA1号のパフォーマンスレポートは以下の通りでした。
◆検証期間 2016年1月1日~2020年12月31日の5年間
◆通貨ペア USDJPY
◆枚数 0.1ロット=1万通貨
◆時間軸 30分足
◆スプレッド 5ポイント
◆取引回数 740回
◆勝率 52.03%
◆PF 1.43
◆初期口座残高 100万円
◆最大ドローダウン額 6万8350円
◆最終口座残高 166万1990円
「5年間も運用して、たったの66万円の利益かよ」と、がっかりされるかも知れませんが、こういったEAでもポートフォリオの中の1つとして複利運用をすれば、ちゃんと億単位の利益を出してくれるものです。それは追々ご説明しますので、ご期待ください。
ところで、上記パフォーマンスレポートの中に「最大ドローダウン」という言葉があります。本日はこれについて少し解説します。
ドローダウンとは、連敗などにより資産曲線が右肩下がりになっている部分を言います。上の画像の赤丸部分がそうです。
そして、ドローダウンの計測方法には、
①最大ドローダウン額
②最大ドローダウン率
の2つがあります。
①はドローダウンを金額ベースで算出したもので、②は①を分子としてドローダウンが発生する前のピーク時の資産を分母とした百分率です。
たとえば、
上の画像の赤丸の部分のドローダウン額は、13万円-10万円=3万円で、このときのドローダウン率は、3万円÷13万円=23.08%です。
青丸の部分のドローダウン額は、20万円-16万円=4万円で、このときのドローダウン率は、4万円÷20万円=20.00%です。
そして、検証期間中で一番大きなドローダウン額を「最大ドローダウン額」といい、メタトレーダーのパフォーマンスレポートでは「Maximal drawdown」または「最大ドローダウン」として表示されます。一方、一番大きなドローダウン率を「最大ドローダウン率」といい、メタトレーダーのパフォーマンスレポートでは「Relative drawdown」または「相対ドローダウン」として表示されます。
上の画像でいうと、青丸の部分が最大ドローダウン額(4万円)で、赤丸の部分が最大ドローダウン率(23.08%)となります。このように、最大ドローダウン額と最大ドローダウン率では、発生する時期が異なることもあります。そして一般的には、単利運用では最大ドローダウン額を、複利運用では最大ドローダウン率をそれぞれ重視します。
ところで、下の二つの画像は、MT4のバックテストによるものではなく、エクセルのランダム関数を利用して作成した架空のEAによる資産曲線です。
いずれも単利で、0.1ロット=1万通貨で運用したものと仮定しています。
EAその1は、
利益 128万円
最大ドローダウン額 24万円
EAその2は、
利益 118万円
最大ドローダウン額 10万円
です。
利益だけを考えると、EAその1の方が優れているような気がしますが、運用開始早々赤丸の部分で資産の5分の1ほどのドローダウンが発生しており、精神的にはかなりキツいでしょう。よって、EAその2の方が優れていると考えるべきなのです。EAその2で利益を大きくしたいのであればロット数を上げればよいだけのことです。
たとえば、EAその2だけ0.2ロット=2万通貨で運用すると、
EAその1は、
利益 128万円
最大ドローダウン額 24万円
であったのに対して、EAその2は、
利益 236万円
最大ドローダウン額 20万円
という結果になり、EAその2の方がEAその1よりも優れていることがよくわかります。
それゆえ、私たちEA開発者が一番心血を注ぐのは、最大ドローダウンをいかに小さくするか、ということで、「システムトレードは最大ドローダウンとの闘いである」と言っても過言ではありません。
本日はここまでです。次回をお楽しみに。
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